今、年金繰り下げする人が少ない理由と、これからの世代が繰り下げを検討すべき理由
はじめに
”厚生労働省が発表した「令和3年度版厚生年金保険・国民年金事業年報」によると、2021年度(令和3年度)では国民年金を受給する権利を持つ約3,435万人のうち、繰り下げ受給を選択したのは約61.2万人だった”
- 「繰り上げ受給」をしている人の割合は、約9人に1人(11.2%)
- 「繰り下げ受給」を選択している人の割合は、約50人に1人(1.8%)
だそうです。その理由として、以下を推察しています。(それぞれの理由が、実際の年金受給者の意識調査によるモノではないので推察としておきます)
理由1:もらえるものは早くもらいたいという心理
理由2:繰り下げ受給をするまで老後の貯蓄が持たない
理由3:加給年金やその他給付金が受け取れなくなることがある
理由4:税金や社会保険料が増加してしまう
理由5:医療費の自己負担が増加する可能性がある
理由2が、切実と言えば切実。でも、働けばいいと言われればその通り。
今、年金繰り下げする人が少ない理由と、これからの世代が繰り下げを検討すべき理由
この統計って、その年に受給開始した人が分母ではなく、年金受給者全員が分母。なので、60歳から年金もらうのが割と普通だった世代も含まれています。この辺の世代間の事情もあるのではないでしょうか。普通にもらっても、それなりの金額がもらえた世代が含まれているわけで。今80歳の方が60歳の頃は、デフレまっただ中。後述するマクロ経済スライドの心配をしてる人なんてほとんどいなかったんじゃないでしょうか?
年金受給額が増えるおトクなシステムだから繰り下げるべしって言うのは、どちらかというと政府よりの方便、と私は考えます。何度か書いてますが、私が考えるその真なる理由は、うっかり長生きしてしまう可能性もある中、
- マクロ経済スライドで実質年金が目減りする自己防衛策が必要だから。
です。
年金はインフレよりも少ない額しか受給額が増えません。これ、じわじわ効いて来ますよねー。しかも、絶対額が減るわけではないので、少しずつ貧乏になっていくのに気が付かないという巧妙な方法です。まさにゆでガエル。そんな状況にならないよう、各自が自己責任で年金額を確保する必要があります。しかも、受給を開始してしまうと、もうこの手は使えないのです。そうなると、残る対策は長く働くことぐらいですけど、長く働くと言うことと、繰り下げは、本来、相関があります。長く働くんだったら最初から繰り下げておけと。
おりしも、インフレの足音が聞こえてきています。この辺の危機感は、そのうち「政府が悪いコール」が大好きなメディアと大衆が騒いで、一気に浸透していくのではないでしょうか。少子高齢化&長寿なんだからあたりまえの制度なんですけどね。
65歳からの年金受給が普通になる、つまり「特別支給の老齢厚生年金」が貰えなくなる世代(男性だと1961年4月2日以降、女性は1966年4月2日以降)が、65歳あたりになったころから、繰り下げ制度の活用が一気に進んで行くのではないかと予想しておきます。
私は、まさに貰えなくなる世代の最先端。老齢基礎年金は70歳まで繰り下げ、老齢厚生年金は加給年金受給を考慮し、65歳〜70歳のどこかで受給開始する予定ではいます。・・・が、悩む〜(笑)。
コメント
私も特別支給の老齢厚生年金がもらえない世代です。幸い、生命保険会社のお宝の個人年金とIDECOで退職する65歳以降3年間~5年間の生活費を賄い、繰り下げ受給を目論んでいます。本当に自己責任で老後の資金計画を考えないといけないなと痛感しています。
投稿: | 2023年9月24日 (日) 10時05分
師匠
こんにちは
今日もマニアックな仙人投稿ありがとうございます。
私は年金受給戦略は
・厚生年金65受給プラス加給年金
・基礎年金70繰り下げ受給
という2本立てです。
できるだけ社会保険税・その他税を払いたくないので上にしないとだめなんです。
税がなければ60繰り上げ受給で支給額全額インデックスファンドに投資というのが最適解なんです。
そんなことお見通しのZ真理教。複雑な制度できないように組成されています。
ZT大卒詐欺集団、頭脳明晰精鋭たちを集めて日々必死で考えているのだから抜け道はないですね。
年金額によりますが、受給額が増えてもアレって差っ引かれる額が半端でないのでできるだけ税回避できる所で申請するのがよいかと。
いちばんいいのが住民税非課税で済む金額のところがいいのですが、その金額も将来変わるかもしれないしね。
まさにパズルゲームですな。
投稿: aoba | 2023年9月24日 (日) 10時22分
自営業です 住民税非課税にする為に調整してます
時間の位相でお金って奴は価値が違いますから 早くもらって運用に当てた方が気分が良いです どうせ支配層は繰下げされた分を運用するんですからね そのおこぼれが加算されるんです 所得税取られながら 馬鹿らしいですよ 繰上げ一択です 住民税非課税が射程にあるなら 国民年金等保険料不払いも考慮です ハードルは老齢基礎年金と年金基金の合計で年間およそ150万円です 自治体により違いますが
投稿: k | 2023年9月24日 (日) 10時51分
みなさまコメントありがとうございます。
>特別支給の老齢厚生年金がもらえない世代 様
年金3階部分で60代を支え、年金1〜2階部分で70代以降を支える、というのは基本形のひとつですね。
>aoba 様
>パズルゲーム
収入で取られ(所得税・社会保険料)、支出で取られ(消費税)、資産で取られます(最後は相続税)。これらを回避しようという黄金の羽根スキームは将来の制度改正で終了www 考え出すと出口なしです。
繰り下げは、年金見込額が少なく、資産も作れなかった人の最後の砦と考えておく程度でよいのかもしれません。
>k 様
>運用に当てた方が気分が良い
5〜10年くらい市場が低迷すると気分が悪くなります。働いていて収入があったときでさえそうでしたから(^^;)。 この辺との兼ね合いですね。
投稿: NightWalker | 2023年9月24日 (日) 11時14分
ある程度の逃げ切り資産を確保した幸福層は70歳前後からの受給が良さそうと考えています。
税の観点からは最適にならない可能性がありますが、思わぬ長生きリスクや株式資産の暴落などに対処するために無リスク資産の置き場所としても繰り下げ受給は有効かと。
投稿: 悩ましいですが、、、 | 2023年9月25日 (月) 12時40分
とても良い内容と思います。
一つだけコメントしますと、65歳以降、全額を繰り下げしますと、年間120万円の年金控除枠を使わないことになります。控除枠は、よく住民税非課税の枠組みの中で処理されていますが、別の検討課題です。
個々に状況は違いますので、一概に言えませんが、この視点からの部分的な繰り下げもときに値すると思います。
繰り下げの是非の議論のなか、あまり触れられていないように思いますので、投稿しました。
投稿: ぐうたらシニア | 2023年9月25日 (月) 13時21分
みなさまコメントありがとうございます。
>悩ましいですが、、、様
>70歳前後からの受給が良さそう
寿命から考えてどのくらいから受給開始がいいのか? というあたりに「平均的な」最適解が落ち着くように制度変更していくだろうと考えてます。個人的にどうすべきかは、、、、悩ましいです(笑)。
>ぐうたらシニア様
>年間120万円の年金控除枠
65歳以前も含めて、70歳までの年金控除枠を、企業年金やiDeCoなどの年金3階部分の現金化に割り当てるという作戦がいいのかなと考えます。そういう意味では、私も老齢厚生年金も70歳まで繰り下げたいのですが、加給年金がちらつきます(笑)。
投稿: NightWalker | 2023年9月26日 (火) 01時10分