« 年金の繰り下げは損得で考えても答えは出ない | トップページ | インデックス型投信の積立投資でひょっとしたら長期リターンをアップするかもしれない「ひと手間」とは »

2021年4月16日 (金)

それでも年金繰下げをするべき理由

さて、昨日引用した、日経さんの記事に、ちょっと気になるご意見が書いてあります。

年金繰下げ制度が整備され続ける理由を考えてみる

学習院大学経済学部の鈴木亘教授によると、

  • もらえる年金はなるべく早く受け取ろうとするのが自然な発想。
  • 70歳までの繰下げを希望する高齢者の割合はわずか1.3%(2017年)。
  • 繰り下げる年数も1、2年程度が多い。

なので、

5年も繰り下げて70歳から年金を受け取ろうとする高齢者は極めてまれ

とのことです。一理あるような気はします。しかし、これから年金受給世代になる人へのメッセージが、「繰下げを利用すべきではない」とも取れるようなものでいいんでしょうか?

ポイントは、一連の年金改革の中でなぜ繰り下げで年金のフローを増やす制度変更を行ったのか?です。これからの年金受給世代は、自らが選んだ(マクロに見てですよ)少子化、そして本来うれしいはずの長寿化。この変化に対応するための年金改革で、2つの年金ギャップを抱えています。

  • 5年分、年金受給総額が減る。(60歳からもらえたが段階的に減少)
  • 実質的な年金の手取りが減る。(マクロ経済スライドや公的年金控除額の減額など。)

なので、このギャップに対する

 自助努力によるリカバリー手段が必要だった

のです。それこそが、年金繰下げ制度や、退職金制度を活用できない層に対する支援策の意味合いが大きい確定拠出年金制度です。

それでも年金繰下げをするべき理由は、もっと切実。

もはや「多くの人が利用しないであろう」などと予言者よろしく悠長に評論している場合ではなく、もっと切実です。

年金繰下げ受給(+ワークロンガー)は、年金改革による受給額の目減りに対して、さしたる準備をしてこなかった人の最後のリカバリー策。ラストチャンスです。年金を受給しちゃったが最後、もうこの手は打てません。

もちろん、自助努力には、当ブログのテーマである長期投資による資産形成という手段もあります。私は、これこそが本命だと思います。しかし、必ずしも誰もがやっているわけではありませんし、65歳からでは厳しすぎます。退職金でいきなり資産運用デビューだなんて、一生資産運用を唱える当ブログだって到底オススメできません。

政府が、このことをはっきりと言うことはないでしょう。何十年か先に実質目減りが始まってから、「政府としてはそのための準備はちゃんとしてきた」という文脈でしか、この論理は登場しないのではないでしょうか。下手に話をすると、ちょっと前の2000万円問題のように、けちょんぱにされ(けちょんぱって今日び誰も言わないw)、善意の改革もムダになってしまいかねないでしょう。

っていうか、気付けよ、と。

-----

今の年金制度は、いわば、仕送りの社会制度化です。仕送りとは違い、コドモをたくさん作った人もそうでなかった人も、お金持ちの親を持つ人もそうでない人も、現役時代の働きによって同じようにもらえる。インフレ耐性も弱くなるとは言え、それなりにある。完全とは言わないまでも、なかなかに絶妙のバランスを保つ制度なのであります。

そんな年金制度が、子育てしなくても老後は困らないシステムであるがゆえに、少子化を生むひとつの要因になってしまい、それが年金制度の足を引っ張り、ひいては日本語をネイティブとする民族の衰退を招くものだとするなら、ちょっと寂しい話ではあります。

私としては、株価の長期成長を信ずるが如く、きっとこれからも、いろんな智恵が生み出され、年金制度は変化していくはずと、前向きに考えたいと思っています。

|
follow us in feedly このエントリーをはてなブックマークに追加
にほんブログ村 株ブログ 投資信託へ にほんブログ村 ライフスタイルブログ セミリタイア生活へ にほんブログ村 投資ブログ 投資でセミリタイア生活へ

« 年金の繰り下げは損得で考えても答えは出ない | トップページ | インデックス型投信の積立投資でひょっとしたら長期リターンをアップするかもしれない「ひと手間」とは »

コメント

政府や厚労省には、繰り下げた時に増える税金や社会保障費の負担額もきっちり宣伝してほしいものです。

投稿: 見知らぬ男 | 2021年4月16日 (金) 11時12分

はい切実です。
標準世帯のもらい始め所得代替率が61.7%から50%へ
もらい始めてもマクロスライドが適用され40%まで低下
名目額は未来の経済状況により変わりますが高齢者の収入の柱が痩せていく未来は想像できます。
特に基礎年金のマクロスライド適用期間の長期化は多くの高齢者に影響を与えるでしょう。年金部会で検討を始めているようですが。
年金カードを何歳できるか 難しい判断ですね。
積極的に公報すると炎上案件ですね 

投稿: 年金繰り下げ待機中 | 2021年4月16日 (金) 12時12分

>見知らぬ男 様
コメントありがとうございます。
拙記事に書いたように、「余計なことは言わない」が基本で、せいぜい「人によって違い、モデルケースを設定して説明することは不適切」という枕詞がつくくらいでは?実際そうだし。

投稿: NightWalker | 2021年4月16日 (金) 12時21分

>年金繰り下げ待機中 様
コメントありがとうございます。
>所得代替率が61.7%から50%へ
ですよねー。必死に「50%以上は下がりません」と宣伝してますけど、減ることは減ります。

>炎上
間違いなしです。「言わぬが花」ということか(笑)。

今回の改正(賃金も連動)したマクロ経済スライドでも、自動減額機能があんまり効かなかった場合、より厳しい次の手が出てくるわけで。自衛としての繰り下げ、資産形成は、大切ですよね。ともに時間は巻き戻すことはできないので。

投稿: NightWalker | 2021年4月16日 (金) 12時38分

年金"保険"は老後のお小遣いではなく、文字通り保険であり
では何をヘッジする保険かというと"長生き"です。
であるならば、自分の貯えで賄える限界まで需給を繰り延べする、以外の正解は無いと思うのですが
貰えないと損だと思っているのか、需給を早める人が多いのは不思議です。
火災保険が降りないと保険料が払い損だからといってわざと家に火をつける人はいないでしょう。

投稿: aaa | 2021年4月17日 (土) 22時21分

>aaa 様
コメントありがとうございます。
受給を早める人は、資産がそれなりにあって意図的に低所得者になろうとしているケースか、目先のお金が好きか、いろいろなんでしょうね。

投稿: NightWalker | 2021年4月18日 (日) 02時38分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 年金の繰り下げは損得で考えても答えは出ない | トップページ | インデックス型投信の積立投資でひょっとしたら長期リターンをアップするかもしれない「ひと手間」とは »

 
 
Copyright © 2005 - 2021 NightWalker's Investment Blog All Rights Reserved.