投資を始める方へ(3):いきなりアセットアロケーション(その2)
投資を始める方へ(2):いきなりアセットアロケーション(その1)の続きです。
長期投資で重要なことは、次の3つであるといわれています。
- 資産配分(アセット・アロケーション)
- 投資コスト
- 時間(マーケットタイミング)
このうち、資産配分が、成果の8割を決めると言われています。
複数の資産に分散することでリスクを下げ、リターンを安定させることが出来るのです。ここでよく言われるのが、相関関係の低い資産を組み合わせなさい、ということですが、本当なんでしょうか?
具体的に見てみます。相関関係の互いに異なる資産A~Fを仮定します。
資産 | 相関係数 | ||
A | ⇔ | B | 1.0 |
A | ⇔ | C | 0.5 |
A | ⇔ | D | 0.0 |
A | ⇔ | E | -0.5 |
A | ⇔ | F | -1.0 |
資産Aと資産Bの相関係数=1、まったく同じ値動きをする資産。資産Aと資産Cの相関係数=0、相関関係がまったくない資産。資産Aと資産Fの相関係数=-1、まったく逆の値動きをする資産です。
ここで、各資産のリターンは、すべて5%、リスク(標準偏差)はすべて20%とします。
組み合わせるとどうなるでしょう。
パターン | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | |
資産 配分 |
A | 50% | 50% | 50% | 50% | 50% |
B | 50% | 0% | 0% | 0% | 0% | |
C | 0% | 50% | 0% | 0% | 0% | |
D | 0% | 0% | 50% | 0% | 0% | |
E | 0% | 0% | 0% | 50% | 0% | |
F | 0% | 0% | 0% | 0% | 50% | |
期待 収益率 |
5.0% | 5.0% | 5.0% | 5.0% | 5.0% | |
リスク (標準偏差) |
20.0% | 17.3% | 14.1% | 12.2% | 0.0% |
期待収益率は、すべて、5%なのに、リスクは、相関関係がなくなり、逆の相関関係になるに連れ、小さくなっていくんですね。
相関係数が-1の資産Aと資産Fの組み合わせでは、なんとリスクゼロです。
不思議ですね。現代ポートフォリオ理論。計算上は、そうなっちゃうんですね。
ってことは、完全に逆の相関関係があり、長期的にプラスリターンが期待できる二つの資産を見つけ出すことができれば、リスクなしでお金が増えていくことになります。多くの資産は、相関関係があります。そんな組み合わせは、そう簡単に見つからないと思います。
もし、見つかったら、こっそり、私にだけ教えてください。
なぜ、こっそりかというと、わかるとその組み合わせにみんな投資するようになるので、たぶん相関関係が変化してしまうからです。まあ、現代は、コンピュータですべての銘柄(投資先)の組み合わせの相関関係を計算できると思うので、プロの方は、相関関係が逆の組み合わせをご存知なのかもしれません(あくまで想像です)。でも、その情報は、瞬く間にプロの間で共有され........考えるのは止めた方が良さそうです。
てなわけで、分散するとリスクを下げることができるけれども、いろいろな市場参画者がいる以上、その効果は日々変化していく、ということになりそうです。一方、相関関係がまったく同じと言う組み合わせも逆に存在しにくいので、分散効果は、ゼロにはならないと思います。
こんなことを考えながら、自分なりに資産の組み合わせを考えていくしかありません。
「投資初心者に向いた資産の組み合わせを教えてください」という質問にお答えするのは、非常に難しいです。もしあるとすれば、それは、「リスク資産に投資しないことです」となります。
コメント
期待収益率と相関係数って独立じゃないですよね?
相関係数-1で50%ずつもったらリスク0になるのは、Aの収益をFが打ち消して常に儲けが0になるからですよね。
まさしくフリーランチはない、ってことですよね。
投稿: | 2007年12月22日 (土) 14時45分
>?様
期待収益率と相関係数は、独立です。
>常に儲けが0になる
期待収益率が5%, リスク20%、相関係数=-1の資産AとFが1標準偏差分ぶれたとします。
すると、
資産A=+25%の収益(=5%+20%)
資産F=-20%の収益(=5%-20%)
平均すると、やっぱり、5%の収益、となります。
計算上、儲けはゼロにならないんです。
しかし、このような状態になり続ける組み合わせは、現実には存在しません。
ゆえにフリーランチは存在しないんですね。
投稿: NightWalker | 2007年12月22日 (土) 15時12分