投資を始める方へ(7): 金利の力
さて、今回は、
株式と債券の比率を金利の変化に応じて変える。
ことの意味です。
このシリーズでも、後でお題となる予定の「リバランス」ですが、この考え方からすると株式と債券の比率を変えるなんて「もってのほか」とお思いの方もいらっしゃるかもしれません。
そんな方は、定期預金の金利が5%に上がった時のことを考えてください。
それでもあなたは、多くの資産を、株式で運用しますか?もちろんする人もいるでしょう。
では、さらに上がって、金利が7%になったらどうでしょう。
さすがに、株式を高比率で運用する人は、減ってくると思います。
投資というのは、リスクに見合ったリターンを上げる必要があります。
以下にある試算を示します。
- 日本株式と日本債券のポートフォリオ
- ポートフォリオの期待リターン 5%
- 金利が1%、3%、5%の場合のリスクリターンを試算。
日本株式と日本債券の相関係数:0.19という条件です。その他の条件は、表の中に書きました。
パターン | 1 | 2 | 3 | |
個別期待 リターン |
日本株式 | 6.0% | 6.0% | 6.0% |
日本債券 | 1.0% | 3.0% | 5.0% | |
個別 リスク |
日本株式 | 21.62% | ||
日本債券 | 5.45% | |||
資産 配分 |
日本株式 | 80% | 67% | 0% |
日本債券 | 20% | 33% | 100% | |
期待収益率 | 5.0% | 5.0% | 5.0% | |
リスク |
17.53% | 14.86% | 5.45% |
パターン3がもっとも効率が良くなってしまいます。ローリスク・ミドルリターン。
リスクフリーレートの資産(定期預金など)と組み合わせた場合は、もっと低くなります。
上記の例でいえば、日本株式のリスク×日本株式の資産配分比率で単純に計算できます。
金利1%のとき:リスク=21.62%×80%=17.30%
金利3%のとき:リスク=21.62%×67%=14.41%
金利5%のとき:リスク=21.62%×00%=00.00%!
このとき、ポートフォリオを変更すべきでしょうか?
水瀬さんのご指摘にあるように、投資資産の売却のタイミングは、誰にもわかりません。
大変難しい問題です。今は、考える必要のないことです。しかし、高金利になったら、考えなくてはいけない問題です。その時までに、自分の投資哲学を固めておくしかないと思います。その日がいつになるかはわかりません。お互い、勉強しておきましょう。
コメント
こんにちは。
トヨタFS証券での澤上御大の熱いトークを以前見たことがあります。
もっと語って欲しいのですが時間が短すぎますね。
今年になってからマネーカイゼン計画の更新が止まっているのが気になります。
投稿: yarno | 2007年4月14日 (土) 17時03分
色々、疑問があります。
1. 状況変化による資産配分変更は大怪我の元?
書籍「貧乏人のデイトレ」ではどんな状況でも資産配分を変更しなかった事が結果的に大きな運用益をもたらした、という話がありましたよね。現代ポートフォリオ理論を最大限に活用するなら、景気によって資産配分を変更することが正しいのか疑問です。例えば「長期債券フェーズ」で長期債券を掴んでいるようだと既に織込み済みで、高掴みの可能性があるように感じます。
2. 澤上さんは株のことしか考えていないのでは?
おっちゃんのポートフォリオ理論って日本株のことしか考えてなくて、景気が上向きになりそうなら先回りして景気敏感株を、景気が下向きになりそうなら先回りしてディフェンシブ株の配分を高める事のような。おっちゃんの運用方法は好きだけど万人には無理やで。
3. 年齢に応じたリスク許容量による資産配分の変更の重要性
景気による資産配分より、投資家のリスク許容量で資産配分を重視するべきではないかと。収入源の少ない高齢者が多くのリスクを取る運用を選ぶことについては疑問です。また自分の死期に合わせて資産を最大限にする運用はあまり賛成できません。高い相続税を支払うために資産運用する目的ならいざ知らず、本来なら自分の生活をよりよくするためのおカネでしょう?
万人のためのポートフォリオがあるとすればそれは公的年金のポートフォリオなんじゃないかと。
投稿: Mc.N | 2007年4月14日 (土) 17時13分
皆様コメントありがとうございます。
>yarno様
>マネーカイゼン計画の更新が止まっているのが気になります。
そうですね。藤沢さんとの契約が切れたのかしら(笑)。
>Mc.N様
貴重なご指摘ありがとうございます。
>状況変化による資産配分変更は大怪我の元?
大けがの元、かもしれませんね。この件については、リバランスの話題を述べるときにする予定です。おっしゃるように勘違いをする方もいらっしゃるような気がしてきましたので、エントリーに、ここを読むように追記させていただきました(^^;)。
>澤上さんは株のことしか考えていないのでは?...万人には無理やで。
そのとおりですね。無理です。バブル末期に株を全部売って、のくだりは、その辺をにじませたつもりだったんですが...いまいちでした(笑)。すみません。この投資法の実践は、実は極めて困難です。
>リスク許容量による資産配分の変更の重要性
同意します。年齢というか、お金を使う時期には、リスクを低めにするべきだと思っています。
一方、リバランスの意味の一つにポートフォリオの性質を一定に保つということがあると思います。この維持する性質をリスクではなくリターンと見た場合に、リターンを一定化して、ポートフォリオの最適化を行うと、債権比率を上げた方が良いという考え方も成立します。
では、なぜ、リバランス戦略の方が有利か、というと金利が上がる 時にはインフレ率が高くなっていると思われる。その場合、期待リターンは低インフレのときに設定したより高くする必要が生ずる。結果として、株式債券比率は一定に保つことになるのではないか?ということのように思います。
この「インフレによる実質リターン低下にも強いはず」というのが、「リバランスの効用」の一つと考えているのですがどうでしょうか?
記事は、インフレになっても期待リターンは5%でいいんだ!という人が、金利が5%になったときに実施する投資法です。
投稿: NightWalker | 2007年4月14日 (土) 18時29分
リバランスについては特に異論はありません。現代ポートフォリオ理論もリバランスあってこそですし。年齢どうこうというのは前の natu さんの質問に対しての私なりの返答のつもりでした。
>>記事は、インフレになっても期待リターンは5%でいいんだ!という人が、金利が5%になったときに実施する投資法です。
その運用方法は若干、疑問があります。
金利が 5% まで引き上げる過程を想像すると、かなりのインフレに陥っている可能性が高いと考えます。デフレでの 5% 運用とインフレでの 5% 運用とでは性質が異なるのではないでしょうか。
インフレでの 5% 運用は、リスクが少なくて済みそうですが、貨幣の価値は日々劣化していますよね。そんな状態で 5% 運用で満足してよいものでしょうか。
私はリターンを固定してリスクを変動させるのではなく、リスクを固定してリターンを変動させる方が資産運用としては理に適っていると思っています。
実際問題として、金利が 5% になったらインフレ率は無視して皆、定期預金に放り込むのが想像できます。バブルの時は結果的にそれが正解でしたが、今後はどうなることやら。
投稿: Mc.N | 2007年4月14日 (土) 21時46分
>貨幣の価値は日々劣化していますよね。そんな状態で 5% 運用で満足してよいものでしょうか。
「そんな状態(=高インフレ)」が続かないというところが、このシナリオのポイントと考えますがいかがでしょうか?
こんなシナリオです。
1.インフレになる。
2.インフレを抑止するために金利を上げる。
3.利率5%の資産を買う。
4.利上げの効果が出て、インフレ率は中長期的に低下。
5・利率5%の資産は宝物。
5%が正解かどうかは別として。
「そんなにうまくいかないよ」とも思います。なぜなら、3.の時期に、株が天井を付けていないかもしれないからです。
>今後はどうなることやら。
上記シナリオも含め、本当にそうですね。
投稿: NightWalker | 2007年4月14日 (土) 22時24分
>> 「そんな状態(=高インフレ)」が続かないというところが、このシナリオのポイントと考えますがいかがでしょうか?
他国(特に米国)の金融政策を見る限り、物価を制御したり予測したりすることは、かなり難しいような。
3. の見極めはかなりのリスクを伴いそうです。資産が長期債券だった場合、価値の下落が著しく満期まで持ち続けなければらないリスクが付きまといます。
機を見て売買する手法は万人向けとは思えません。
これから投資を始めるビギナー向けのページを目指している(んですよね?)のなら、まずは万人向けのポートフォリオ理論の基礎から紹介した方が良いのではないかと。
投稿: Mc.N | 2007年4月14日 (土) 23時18分
>まずは万人向けのポートフォリオ理論の基礎から紹介した方が良いのではないかと。
ご忠告ありがとうございます。ところでMc.Nさんのお考えになっておられる「万人向けのポートフォリオ理論の基礎」とは何でしょうか?
1.リスク許容度に合わせたアセットアロケーションを組む。
2.その後、リバランスをし続ける。
3.リスク許容度が変わったら、アセットアロケーションを見直す。
ということですか?お教えいただけると幸いです。
投稿: NightWalker | 2007年4月15日 (日) 00時19分
こんにちは、水瀬です。
ちょこっと反論をさせていただきます。
株式の買い時・売り時のタイミングは、とても難しく、プロでも一貫して成功している者がほとんどいないことは、よく知られた事実ですよね。
であるにもかかわらず、単に金利の高低を見れば、株式の売買のタイミングが適切に判断できるという考えには、首をかしげずにはいられません。
自己責任を促したり、両論併記しておけばよいというレベルでなく、「危険」であるとすら思います。
もちろん、この方法で儲けられる可能性はあるとは思いますが、その他の「投資を始めるかたへ」シリーズ記事にはあった、実効面での論理的根拠が乏しく、少なくとも、初心者へのメッセージとしては、不適切なものだと思います。
初心者へのメッセージであることを考慮して、いつもよりキツい書き方をしてしまっております。
生意気を言って申し訳ありません。。
投稿: 水瀬 ケンイチ | 2007年4月15日 (日) 00時34分
水瀬様
ご忠告ありがとうございます。
>単に金利の高低を見れば、株式の売買のタイミングが 適切に判断できるという考え
すみません、確かにそう読み取られてしまいますね。そうはうまくはいかないよ、ということを、本当は書きたかったわけです。筆力不足でした。
ズバッと書くことにします。
>「危険」であるとすら思います。
>初心者へのメッセージとしては、不適切
そう思う方がいらっしゃる以上、記事は修正します。
高金利になったとき、わざわざ、株式でリスクを取り続ける意味があるかないか、が問題です。確かに現時点の日本では考える必要のない問題です。
投稿: NightWalker | 2007年4月15日 (日) 01時40分
万人向けのポートフォリオ理論の基礎、ですか。殆ど「貧乏人のデイトレ」がそれを指し示してくれていると思っています。
1. 市場の動きを予測しない
しても無駄だから(ランダム・ウォーク)。
2. 市場平均には敵わない
長期運用で市場平均を越えることは難しい。長期運用ならインデックス運用、お勧め。
3. 資金流入はドル・コスト法で
投資時期の分散によりリスクを分散。
4. 株と債券の相性
株と債券を組み合わせる運用で安定した運用益を目指す。安定した運用益は複利効果を生みやすい。ボラリティが高いと複利効果が失われやすいとも。
5. リバランス重要
リバランスしないと次第にボラリティが高くなり福利効果を生みにくくするし、株は下がってこそ資金流入の価値がある、とも。
6. 長期運用前提
短期間では複利効果は生まれない。長期運用なら各資産のボラリティはかなりマイルドになる。
で、私の万人向けの運用としては「アセット・ナビゲーション」シリーズの積み立てが合理的な運用方法、という結論に至ります。「すみしん マイセレクション」シリーズでも可。401k にも採用されているファンドだし、リスクも各投資家が選択できるのもイイすね。
じゃあ、お前はその理想通りの運用方法を実践しているのか、と言われるとNO!ですね。なんたって面白くないし、ステキな運用法は人から教えてもらうのではなく自分で見出すものだと思ってるから。
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>> 高金利になったとき、わざわざ、株式でリスクを取り続ける意味があるかないか、が問題です。
高金利の場合、長期のインフレ状態に陥っている可能性が高く債券ではインフレ上昇に付いていけない場合が多いようです。株の場合、インフレと同期する場合が多いので、それなりの運用益が期待できるはずです。
インフレリスクに株がイイという評論家もいます。流石にそこまで期待できないと思いますが、他の資産よりはインフレ対策に有用だと思います。
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「投資信託のポイント」シリーズを自薦しておきます。完成にはまだまだ程遠いですが。
投稿: Mc.N | 2007年4月15日 (日) 02時53分