母のポートフォリオの検討(外国債券と株式の適正比率の巻)
何ごとにも「功罪」というものがあります。合理性の低い運用をしている毎月分配型投信ですが、保守的なわが国の国民に対し「貯蓄から投資へ」という流れを加速したという功績があります。このおかげで、日本におけるリスク商品の流動性は高まり、効率的市場の形成に多少なりとも貢献しているはずです。
それによって損をした人たちがいたとしても、「自己責任」という論理の下には、「知ったこっちゃない」というのが、投資家として正しいスタンスなのかもしれません。
しかし、身内に損をする人がいた場合は話が別です(^^;)。というわけで、母のグロソブの乗り換えを推進中です。今回は、乗り換えポートフォリオ検討編。
一連の経緯は、下記の通りです。
ポートフォリオを検討するに当たって、以下の前提および方針があります。
- 今回投資するのは、完全なる余剰資金。全体金融資産の20%未満である。(リスクはそれなりに取れる)
- よって、外債だけの投資ではなく、株式にも投資する。
- 不動産投信は、上記債券株式投資比率との見合い(勘ですね)で決める(財産3分法にしたい)
- ソニーバンクだけでポートフォリオを完成させる。(投信スーパーセンタも検討しましたが、利便性の面と日興グループの不祥事で母を説得できそうもなかったため)
この条件下で、外債と株式との適正比率と投資商品の検討をします。
ここで、お年玉の表が活躍です。(実は、このお年玉、このための複線だったんですね)
Excelのソルバー機能を使って、外国債券と日本株式、外国債券と外国株式の二つの組み合わせにおいて、リスク(標準偏差)最小になる組み合わせとシャープ・レシオが最大になる組み合わせを求めてみました。相関関数他の条件は、ちょっと古いデータですが、ここのデータです。
その結果が下記の表です。
パターン | 1 | 2 | 3 | 4 | |
資産配分 | 日本株式 | 34.7% | 43.0% | 0.0% | 0.0% |
日本債券 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0.0% | |
外国株式 | 0.0% | 0.0% | 7.1% | 88.2% | |
外国債券 | 65.3% | 57.0% | 92.9% | 11.8% | |
期待収益率 | 5.2% | 5.4% | 4.7% | 6.7% | |
リスク(標準偏差) | 10.7% | 11.0% | 14.6% | 19.1% | |
リスクプレミアム | 3.4% | 3.6% | 2.9% | 4.9% | |
シャープ・レシオ | 0.316 | 0.324 | 0.197 | 0.257 |
- 外国債券:日本株式 リスク最小ケース
- 外国債券:日本株式 シャープレシオ最大ケース
- 外国債券:外国株式 リスク最小ケース
- 外国債券:外国株式 シャープレシオ最大ケース
リスクが最小のケースは、この比率を境にリスクをあげても無駄な(リターンが下がってしまう)ゾーンとリスクをあげればリターンが増えるゾーン(効率的フロンティア)に分かれるということを意味しています。パターン1の例で言えば、外国債券比率を65.3%以上増やすと、リスクは上昇しますがリターンは減ってしまうんです。日本株と組み合わせるんだったら、外国債券の割合は、65.3%以下にしておいた方がいいよってことになります。
シャープレシオ最大のケースは、計算上、最も効率的なポイントになります。日本株と組み合わせるんだったら外国債券57.0%が最も効率が良さそうだよ、というわけです。
外国株式との組み合わせは極端な結果ですね。
以上を勘案し、気合で外国債券比率は50%にすることに決めました。次に外国債券比率を50%とした場合の日本株式と外国株式の組み合わせを求めてみました。
パターン | 1 | 2 | |
資産配分 | 日本株式 | 41.2% | 38.9% |
日本債券 | 0.0% | 0.0% | |
外国株式 | 8.8% | 11.1% | |
外国債券 | 50.0% | 50.0% | |
期待収益率 | 5.5% | 5.6% | |
リスク(標準偏差) | 11.3% | 11.4% | |
リスクプレミアム | 3.7% | 3.8% | |
シャープ・レシオ | 0.330 | 0.330 |
外国株式比率8.8%以上が効率的フロンティアのゾーンにあり、外国株式比率11.1%がシャープレシオ最大となる点になります。
次に以下の方針で最終決定をしました。
- 外国債券のみに投資した場合のリスク(標準偏差)14.67%を下回るようにする。
- 10%単位の単純な比にする。
見比べてみた結果が以下の表です。どれにしようかな。
パターン | 1 | 2 | 3 | 4 | |
資産配分 | 日本株式 | 40.0% | 30.0% | 20.0% | 10.0% |
日本債券 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0.0% | |
外国株式 | 10.0% | 20.0% | 30.0% | 40.0% | |
外国債券 | 50.0% | 50.0% | 50.0% | 50.0% | |
期待収益率 | 5.6% | 5.6% | 5.7% | 5.7% | |
リスク(標準偏差) | 11.4% | 11.8% | 12.7% | 14.2% | |
リスクプレミアム | 3.8% | 3.8% | 3.9% | 3.9% | |
シャープ・レシオ | 0.330 | 0.323 | 0.302 | 0.274 |
えいっ。気合だ~。2番のパターンで検討を進めることにしました。 外国債券50%を軸に、日本株30% 外国株20%の3点掛け。ついでにグラフをつけてみますね。選んだポートフォリオは、図にすると、こんな位置です。
以上、いかにも合理的に導き出されたかのように書きましたが、相関係数や期待リターンなんて所詮は過去のデータに過ぎないし、刻一刻と変化していく生き物みたいな数字を根拠にしているわけだし、 しかもシロート計算だし(^^;)、そもそもそんなものでうまく行く位なら誰も苦労せず大金持ちになれるはずだし.....てなわけで、最後は「雰囲気」で決めました。計算表に背中を押してもらっただけです。
株式比率50%は、高齢者向けとしてはリスクが高すぎるのではと思う人もいるかもしれませんが、計算上は、外国債券だけに投資するより、リスクが低いわけです。ここが、ポートフォリオ理論の不思議ですね。
また、本ポートフォリオは20%未満の余剰資金で運用するわけであり、トータル資産における残りのリスクフリー資産と組み合わせて考えた場合、5分の1以下のリスクとなるわけです。実は、全部株式にしてもよかったくらいですが、もともとがグロソブだったこともあって、外債にこだわってみた次第です。
今回は「相当理屈っぽく」かつ「長く」なってしまったので、具体的に何を買うか、不動産投信の組み入れについての検討の結果は、次エントリーにて、ご報告します。
参考文献(こんな私でもポートフォリオの計算ができたのは、以下の本のおかげです)
コメント
ご立派!!(^^)
そんじょそこらのFPさんにも負けませんね。
投稿: 水瀬 ケンイチ | 2007年1月 3日 (水) 09時50分
水瀬様
恐縮です(汗)。
自分のポートフォリオは、わりと勘だけで決めてきたんですが、肉親とはいえ、他人のポートフォリオを考えるとなるといろいろ考えてしまうものですね。
投稿: NightWalker | 2007年1月 3日 (水) 16時43分
謹賀新年。本年もよろしくお願いします。
私も地元の中小証券で購入している「グロソブ」を、ソニーで「中央三井外国債券」に(全額ではないが)切り替えることを検討していましたので、先例を書いていただき大変ためになります。
ポートフォリオ理論のマジックは、並列回路のようなものかもしれません。信頼度が低いものも、複数並列につなぐと、実用に耐えるものになるということで。単純に債券や株式で考えるのではなく、組み合わせることがいかに大事か勉強させていただきました。
投稿: 新幹線 | 2007年1月 3日 (水) 19時48分
新幹線様
本年もよろしくお願い致します。
本記事が多少なりともお役に立ちうれしいです。
ポートフォリオ理論は不思議です。
外債しか投資資産がない私の母のようなケースでは、単純に別の外債投資に切り替えるのではなく、相関関係の低い資産(株式など)と組み合わせてポートフォリオを作った方がリスクも下がるし期待収益率も高くなるんですね。計算してみて納得。ホント不思議です。
投稿: NightWalker | 2007年1月 3日 (水) 20時34分