グローバルソブリンと中央三井外国債券インデックスのコスト比較
前回のエントリーでご紹介した、週刊ダイヤモンドの特集「投信の罠」ですが、皆様の中には、「いくらなんでも言いすぎじゃないの?」とお思いの方もたくさんいらっしゃると思います。「グロソブ、確かに手数料は高いけれど、郵便局の普通預金に預けておくよりはましだったんだから」というご意見も多いかと。
郵便局の普通預金よりましだった...確かにその通りです。でも、この理屈って比べる対象が悪いですね。やはり同じアセットクラスの商品と比べないと。
というわけで、グロソブと私が良く取り上げる中央三井外国債券インデックスファンドの徹底比較です。
まずは、保有コストです。
販売手数料 | 信託報酬 | 信託留保 | |
グロソブ | 0~1.575% | 1.3125% | 0.50% |
中央三井 | 1.05~2.10% | 0.75% | 0.10% |
次に、当期末基準価額をベースにした税金の支払い率(税金/基準価額)を計算してみました。
期末 基準価額 |
配当(年) | 税金 | 税金率 | |
グロソブ | 7,568 | 480 | 48 | 0.63% |
中央三井 | 15,464 | 20 | 2 | 0.01% |
保有コストである信託報酬+税金は、グロソブ1.95%、中央三井0.76%。その差1.18%(年間)。
ちなみに、グロソブから中央三井に乗り換えた場合ですが、販売手数料は1.05%(ソニーバンクの場合)。これに売却時信託留保金0.5%(高い)がかかりますので、合計1.55%。 保有コストの差額は、1年ちょっとで回収できます。
これは、配当課税10%の場合です。もし、軽減税率が廃止され、配当課税が20%になると下記の通りとなります。
期末 基準価額 |
配当(年) | 税金 | 税金率 | |
グロソブ | 7,568 | 480 | 96 | 1.27% |
中央三井 | 15,464 | 20 | 4 | 0.03% |
この場合の信託報酬+税金は、グロソブ2.58%、中央三井0.78%。その差1.81%(年間)!グロソブ→中央三井への乗り換えコストは、1年以内に回収できることになります。
もう、やっとられんわ~!という感じです。橘玲氏が、毎月分配ファンドを「愛国ファンド」と呼ぶお気持ちがよくわかります。
整理します。
- 保有コストの差は、年間あたり、増税前で1.18%。増税後には1.81% に及ぶ。しかも、ずっとかかる。
- 乗り換えコストは、1.55%(ソニーバンクの場合)かかるが、一回こっきりである。
結論は、言うまでもありませんね。投資は自己責任でお願いします、ということになります(^^;)。
最後に保有コストおよびファンドマネージャの能力の総合力であるリターンを比較します。
1ヶ月 | 3ヶ月 | 6ヶ月 | 1年 | 3年 | 5年 | |
グロソブ | -0.1% | 4.1% | 6.3% | 6.2% | 25.1% | 38.1% |
中央三井 | -0.2% | 4.4% | 7.4% | 7.2% | 28.9% | 45.6% |
これまた、その差は、歴然です。コストの差が、もろにでているみたいですね。そして、今度の配当課税の増税で更に広がる可能性もある、ということです。プロのファイナンシャルプランナーの皆さんには、毎月分配型投信の保有者にお伝えすることをお願いしたいと思います。軽減税率廃止の影響を。
ところで、実は、恥ずかしながら、私の母(年金生活者)もグロソブ保有してます(^^;)。面目ありません。3年位前に購入し、たしかに増えました。郵便局の普通預金よりはるかにましでした。
しかし、今回のエントリーを書いていて、あまりのパフォーマンス差に愕然としました。今まで、グロソブなんて完全にアウトオブサイトでしたので、まじめにコスト計算なんてしてませんでした。反省!ということで、母にグロソブからお別れすることを 勧めるのが「親孝行」である、と決意した私であります。
コメント
いつも楽しく拝見しています。
ところで両ファンドの税負担の比較ですが、分配金の少ないファンドの方が課税を先送りして複利効果を見込める分、有利だとは思うのですが、いずれ一部または全部を解約する際には(解約時の基準価格-個別元本)に対して課税されるなら、パフォーマンスの比較には、これも加味する必要があるように思うのですが如何でしょうか。
投稿: まるた | 2006年11月29日 (水) 23時14分
まるた様
ご指摘ありがとうございます。
なるほど。おっしゃる通りだと思います。
ご指摘の通り、厳密には、グロソブの累積配当金と同金額を将来、中央三井で解約した場合を差し引かなければいけませんね。
この場合、解約した金額に対し税率10%(20%?)ではなく、値上がり分の10%(20%?)であり、税金の支払額は、配当で支払うよりも少なくなると思います。
たとえば、基準価額が、15%値上がりしたとします。グロソブの配当累計金額が資産全体額の10%に相当したとします。そして、その時の税率が10%だとすると、基準価額に対する税額は、15%×10%×10%=0.1%ですが、配当で支払われてしまうと10%分の配当金額に税率10%をかけた分だけになります。単純計算で1%です。
長くなってしまいました。時間ができたら、今度、また、計算にチャレンジしてみます(^^;)。
今回は、グロソブから中央三井に乗り換える場合についての検討が中心になってます。グロソブ解約時には、キャピタルゲインがマイナスだったことを想定しています ので、キャピタルゲイン税なしということにさせてください。(実際、私の母のグロソブの基準価額は、購入時とトントンかマイナスくらいです。)
投稿: NightWalker | 2006年11月30日 (木) 00時09分
始めまして。新幹線と申します。当方もこのグローバルソブリンオープン1年決算型を70万口保有していますが、現在なんか別の債券ファンドに乗りかえた方がいいのではないかと、うすうす感じるようになっていました。中央三井のファンドはその有力候補だった(ソニー銀行に口座あり)ので、大変参考になったと感じております。有難うございました。
投稿: 新幹線 | 2006年12月 4日 (月) 20時08分
新幹線様
コメントありがとうございます。多くの方が、ご指摘されていますが、毎月分配型は、長期の資産形成には向かない上、配当課税が20%になってしまうと更に悲しいことになります。
また、国際債券型インデックスファンドの選択に当たっては、assetsさんの下記エントリーがたいへん参考になりますので、ぜひご覧ください。http://assets.blog54.fc2.com/blog-entry-90.html
投稿: NightWalker | 2006年12月 4日 (月) 20時43分