持ち家について考える
多くの投資本を読んでいますと、持ち家は、経済学的に見て、オススメできない。ということになっています。「金持ち父さん...」でも橘玲氏の一連の著作でもそのことは指摘されています。私の愛読書、貧乏人のデイトレ 金持ちのインベストメントの第5の智恵にも、そこのところがわかりやすく解説されています。
これら数々の投資本の指摘をまとめて見ますと
- 持ち家用物件は賃貸用物件に比べ、日本の場合25%ぐらい割高(持ち家プレミアム)。要は賃貸物件の方がお得。
- 不動産を買うことで、偏ったいびつなポートフォリオができてしまい、効率的な資産形成上望ましくない。
- 住宅ローンで持ち家をすることは、レバレッジをかけた不動産投資に一点掛けする上に、長期投資の危険も背負うことになるわけで、とてもリスクが高い。しかも、バブル崩壊後の資産デフレで不動産のリターンは、ここ15年でいえば、マイナス。
これでは、資産形成など出来ない、というわけです。まさしく、その通りであり、ぐうの音も出ません。しか~し、これには、少なからず、動揺してしまいます。なぜって、私は、10年ほど前にローンを組んで持ち家だからです(^^;)。「貧乏人のデイトレ..」の住宅に関する項では、こうまとめられています。
借金で住宅を買うという行動の持つお金には代えられないプラス面と、投資理論から明らかになった経済的なマイナス面を総合的に勘案すること。
というわけで、この「お金には代えられないプラス面」というのを個人的事情を踏まえながら、考えてみたいと思います。
私は、10年ほど前に親の健康上の理由がきっかけとなって、親の土地に二世帯住宅を建て、持ち家しました。それまでは、賃貸で別居していましたが、それを機に同居することになったわけです。
私にとって、お金に代えられないプラス面および肯定的な理由とはなんだったのでしょうか。
- 親孝行が出来た。(病気がちだった父が、晩年、孫と遊ぶのを楽しみにしておりました)
- 妻と私の実母の仲が良好。これは、相当大きく、同居決断の最大のポイント。孫がカスガイになっているようではあるが、少なくとも、妻は私の実母にたいへん助けられているようで、本気で同居がいやじゃないみたいです。
- 親が30年以上前に買った物件なので、最近の標準的な物件に比べると比較的広い上に都市圏。(通勤にはまったく困らない)
- ご近所の人たちは、良い方が多く、子供の情操教育上、たいへんよろしい環境。
- 家を建てること自体、楽しめた。
- 二世帯住宅は、玄関はひとつですが、水周り他のスペースを完全に分離したおかげで、妻のお友達もしょっちゅう遊びに来ている様子。来やすいみたい。家族も満足。
- 親の土地に建てた、ということは、相続財産を前借しているようなもの。その分、資産を有効利用できた。この効果は絶大。
- 同居は、企業で言えば、M&A。合算収入は変わらないが、総額出費は減る。NightWalker家全体で考えれば、食費、水道代(二世帯の場合お得)などの生活費だけでなく、もともとかかっていた固定資産税などの税金面でも別居して別々に支払うよりお得。
- 日本の住宅は、ここ15年下がり続けたが、50年で見れば、大幅に上昇。この点、「長期投資であれば、株式のリターンは、債券インフレに打ち勝つ」という分析に少し似ている。もともと、長期投資は、投資先が何であれ、たいへんリスクが高いのです。株式に今後20年投資して、上昇し続ける保証はどこにもないのです。過去、そうだった、というだけ。
- 「敗者のゲーム(新版) なぜ資産運用に勝てないのか
」には、借金は返せという一方で「計画的に資金調達するということと、受身で借金せざるをえないのとでは、大きな違いがある。十分な返済余力が有って、返済のタイミングをコントロールしうる状態で調達してもなんら問題はない。」という指摘がある。私の住宅ローンは、この「計画的な資金調達」の範囲。
こんなところでしょうか。
さて、こう列挙してみると、私は、かなり、恵まれた状況下にあったような気がします。親と妻と子供に感謝しなくてはなりません。
というわけで、私は、かなり個人的な事情が、からんでいることもあるのですが、持ち家しても良かったのかな、と思いこむことに決めております。持ち家プレミアム分のもとは取れています(と思い込むことに...)。
持ち家などの偏った消費は、個人の価値観が大きく影響します。例えば、車好きの人であれば、車にお金をかけるでしょうし、楽器好きの人は高級楽器を買います。旅行好きの人は海外旅行をガンガンしますし、グルメな人は、食い物にお金をかけます。この金額は、一生分で考えると、持ち家プレミアム分を軽く超えると思います。
「貧乏人のデイトレ..」の試算例では、5000万円の持ち家用物件は、1000万円ぐらいの持ち家プレミアムを含んでいるとのこと。持ち家の人は、そうでない人に比べ、1000万円分のぜいたくをしていることになります。
一方で、例えば持ち家をせずにその分、年間30万円分くらい、のぜいたく消費をしている家庭を考えて見ます、この場合、30年間で900万円分のぜいたく消費をしたことになります。このぜいたく分を5%で運用したケースを考えると30年で1993万円に相当します。
持ち家は、そういうぜいたくのうちのひとつかもしれません。無駄遣いはいけませんが、何のぜいたくもせず、生きていても仕方ありませんしね。
コメント
突然失礼します。
『貧乏人のデイトレ 金持ちのインベストメント』の著者の北村慶です。
拙書をご推薦いただきありがとうございます。
以下は、出すぎたコメントなので、ご笑読ください。
さて、「持ち家」の箇所は、本書の中で私も最も記述を悩んだところです。
投資理論からみた価値を超越した価値、というものが住宅には当然にあるわけで、その点が上手く伝わらなかったとすれば、筆力のなさを恥じ入るばかりです。
人生を豊かに過ごすための居場所を持つことは、ある意味では最高の「投資」だと思っています。
投稿: 北村慶 | 2006年10月21日 (土) 21時55分
北村様
コメントありがとうございます。
まさか、著者ご本人から、コメントいただくことになろうとは、思いも致しませんでした。
豊かな現代社会において衣食住にお金をかける意味は、時にその人及びその人を取り巻く方々の「存在」そのものであったりするわけで、経済学的というより哲学的、ライフスタイルのようなものと思っています。
そうは言うものの確定拠出年金等で自己責任を要求される若い世代の人には、投資の基礎知識が必要です。「ウォール街のランダムウォーカー」や「敗者のゲーム」は読破が結構困難でその役割を果たすには、敷居が高い感じがします。
そんな中、北村様の著作は貴重です。先日も北村様の本を真剣に読む若い人(20代と思われる)を電車の中で見かけ、心強く思ったしだいです。
今後のご活躍を期待しております。
投稿: NightWalker | 2006年10月21日 (土) 23時45分