「信託報酬が高めの投信から選んでいる」と話すネット証券
最近、ノーロード(販売手数料無料)の投資信託が増えていますが、販売サイドは、どうやって儲けているのでしょうか?本日の日経新聞ご家庭向けマネー欄に、
金融機関が販売手数料を無料に出来るのは、もうひとつの収入源があるからだ。運用期間中、毎日差し引かれる信託報酬の一部は販売会社に割り振られる。(中略) 中には「信託報酬が高めの投信から選んでいる」と話すネット証券もある。
と書いてあります。まったく、どこのネット証券だ!(記事には書いてありませんでした。さすが大新聞。ただし、記事中の表に書かれていた金融機関は、カブドットコム証券、イートレード証券、丸八証券、楽天証券、マネックス証券、新生銀行、コスモ証券、イーバンク銀行です。よかった、ソニーバンクがなくて。)
山崎元さんは、「手数料が下がらない限り投信は一切買わなくていい」と述べています。
一方で、上記のようなビジネスモデルである以上、
投信残高が増えない限り信託報酬は下がりそうもない。
という現実があります。大きな矛盾です。
投信の残高が増えずに手数料が下がるひとつの方法が「官の規制緩和」あるいは「規制」です。例えば「確定拠出年金専用商品の禁止」です。一部の人にしか購入できない商品を使って税金上の優遇をすることは公正な取引とはいえません。しかし、確定拠出年金制度が始まったとたん、いくつかの優良インデックスファンドがなくなった、という過去の経緯があります。私は業界人ではないので良く分かりませんが、なにやら、からくりがあるように思えてなりません。このあたりの事情に詳しい人がいたら教えて欲しいです。
おそらく、財務省をはじめとするお役人たちが、信託報酬やキャピタルゲインから得られる税収が減ってしまうことを嫌がっているからではないか、と私は推察しています。大手金融機関の利益確保政策とうまく結びついたこともあるでしょう。だとすれば、頭がいいというより、逆のものを感じます。低信託報酬によって、米国並みの投資信託残高になれば、税収ベースが何倍にもなり、信託報酬率が下がっても、かえって税収が増えるのに。損して得取るが出来ない。家計簿型の発想しか出来ないまさに官僚、ということになります。
野村資本市場研究所のサイトに良いレポートがありました。これによると、日本の投資信託残高は、2006年5月時点で57.5兆円(先日の報道では61兆円)。1ドル117円換算で4915億ドル。一方、米国の投資信託残高は9兆3170億ドル、 日本の19倍です。また、ETF市場の伸びも日本は完全に出遅れています。
日本のGDPは米国の約半分、株式時価総額で3分の1、です。なんだかんだいいながら、日本は、大きな経済力を持っています。ところが、日本の投資信託残高は、米国の19分の1なのです。
ここに経済の歪みがあることは、疑うべくもないこと、と私は思います。もし、投信残高が日本の経済規模に見合ったものになれば、日本でも米国並みの投信手数料が大いに期待できます。
確かに投資家の意識が低いのも一因ですが、米国の投資家がみな革新的だったというのは、間違っています。ほんの30年前は米国の一般家庭の人の意識も今の日本と大差なかったというような話も聞いています。米国や外国はどんどん変化したが日本(特に政府)は変化についていけなかった、というのが、現実ではないでしょうか。そして長い時を経て大きな差になってしまった。
日本人はもっと「銭儲け」に必死にならなければ、国際経済から取り残されます。「銭儲け」は、「真面目」である必要はありません。「公正」であれば良いのです。エンロンやライブドアがやったことは、「不正」であり、「不真面目」ではないのです。いまだ「株」=「不真面目」=「不正」と心の中で思っている人が、特に学業成績優秀な方々に多いのではないでしょうか。
この差を埋めるには、より一層の大きな規制緩和が必要であると思います。次期政権にこれが期待できるかどうか...。また、民間でも孫さんのような市場の改革者が現れる必要がある。イートレードは、株のブローカーとしては、価格破壊者でしたが、投資信託のような金融商品では、今のところ、そうは言えていない。
一方、個人投資家はどうすべきか?この歪みを見逃さないわけにはいきません。少々高い信託報酬に負けて投資しない、と言う判断は、長期的に損だと私は思ってます。澤上さん流に言えば、「お先に失礼」というところでしょうか。むしろ重要なのは、いずれ出てくる低信託報酬の商品にどのように乗り換えていくのか?という戦略です。
今回は、私としては渾身の(^^;)エントリーでした。
コメント
NightWalkerさん、こんにちは。
記事、興味深く拝見させていただきました。
とても、参考になりました。
私もNightWalkerさんに触発され、
投資信託の「低コスト化」について書いてみました。
結論までの過程は多少違いますが、
私も「市場の改革者」が必要という意味で、
同じ結論に辿り着きました。
投稿: assets | 2006年9月19日 (火) 14時06分
assetsさま
コメントありがとうございました。また、長い本テキストにお付き合いいただきありがとうございます。
今後ともよろしくお願い致します。
投稿: NightWalker | 2006年9月19日 (火) 19時58分