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2006年9月20日 (水)

投資事業組合とは何か

 投資事業組合とは何か(田中慎一+保田隆明 共著)という本を買ってみました。

 わかりやすく投資事業組合のことが書いてあります。

  私の読後感です。

 投資ファンドは誰でも作れるが、シロート衆がファンドを作るのは、やっぱりたいへん。

 投資事業組合と呼んでいるものには、次の3つがあり、それぞれ、向き不向きがあるとのこと。

  1. 任意組合(民法) 全員無限責任。パススルー課税。ごく少人数のプロ投資家による投資事業組合向き。
  2. 匿名組合(商法) 営業者のみ無限責任。組合員は有限責任。パススルー課税は不可。多数の個人投資家の資金を調達する投資事業組合向き。 しかし、財産は営業者に帰属してしまうため投資家保護の観点では万全とはいえない。
  3. 投資事業有限責任組合 運営者のみ無限責任。その他は有限責任。パススルー課税。登記が必要。公認会計士の監査を受ける必要がある。比較的多数のプロ投資家による投資事業組合向き。

 問題は、3つとも運営者は無限責任を負わなくてはいけないことです。怖そうですね。

 かといって、株式会社をつくるのはたいへんなので、日本版LLCと日本版LLPという制度がつくられたそうですが、前者はパススルー課税が認められていないため、ほとんど利用されていないそうです。後者の場合は、出資者全員が何らかの労務を行う必要がありファンドには適用しにくく、投資事業としての利用は認められていないとされているそうです。どうも、このあたり、まだまだ海外に比べると規制があるらしいのです。

 また、いずれの場合も投資運用を行う以上、金融商品取引法の適用を受けるとのこと。

 上場会社は、投資家保護の要請から、有価証券の募集や売出しを行う場合に有価証券届出書や目論見書を作成したり、毎決算期ごとに有価証券報告書を作成したり、たいへんな作業を行っていますが、登録された投資事業組合についても同様の開示規制に服することになります。

 だそうです。

 投資家保護とはいえ、これでは、気軽にファンドは作れませんし、ファンドの運営コストがとっても大きいです。規模の小さいファンドでは、いかに良心的な志を持とうとも、高いと言われる市販のファンドよりも高コストになってしまうのではないでしょうか。

 興味のある方は、ぜひ、ご一読ください。

 また、本エントリーに関しまして、本書の内容や関連法律知識についてのご質問には、いっさいお答えできないことを申し添えておきます。(よくわからないからです^^;。あしからず。)

 ...あ、逆に教えていただけるのは、助かります(ムシがいいかも)。

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コメント

はじめまして。空色といいます。
rennyさんのブログから来ました。

LLPについては、禁止業務が法令に明記されていますが、投資業務は禁止の対象になっていません。LLPは許認可不要で組合契約を登記さえすれば設立できるので、「認められていない」という意味がよく分からないのですが・・

それと、私募ファンドも情報開示規制の対象となるのでしょうか?

本書にその辺りの記載があったら教えてください。
今後ともよろしくお願いいたします。

投稿: 空色 | 2006年9月22日 (金) 13時00分

空色さま
 こんにちは。コメントありがとうございます。
 記事中にご質問には答えられない旨、書いたつもりだったんですが....。
 それは、新刊なので、本書の引用は、あまりたくさんしたくない。一方で、私に法的な知識が少なく、正確にお答えできないからです。ご理解賜りたく。

 とはいえ、せっかくコメントいただきましたので、答えられる範囲でお答えします。

 1番目のご質問の回答は、
 「本書のp80をごらんください。」となります。ここに「日本版LLPは、純粋持株会社や投資事業としての利用は認められないとされており投資事業組合にはなれません。」との記述があります。
  また、意見の分かれるところではあるが、と断りを入れた上で、
 「日本版LLPを間接的に投資事業に利用するケースが最近散見されるが、損失を他の収入がある出資者に帰属させ、脱税に利用できてしまうケースもあるため、その必然性を(当局に)正当に説明する必要がある。(NightWalker要約)」
 というふうに述べられています。法律の解釈の問題なのでしょうかね。

 2番目のご質問への回答は、
 公募ファンド、私募ファンドの記述はありませんでしたが、P96に「アマ投資家向けの投資事業組合は金融商品取引業者としての登録が必要。したがって企業内容等開示制度の対象となる。プロ投資家向けの場合は、届出だけですむので金融証券取引業者としての規制は受けないが当局の監視下にはおかれ、立ち入り検査等の要請には対応しなければならない。」ということがわかりやすく図解されています。
 
 です。

 投資ファンドを不正に利用する例が出てきたため、当局は今後取り締まりを厳しくする可能性もあるわけですね。(推測)
 
 以上、私の読解力不足もあるかとは思いますが、よろしくお願いします。
 
 勝手ながら、貴ブログへのリンクを貼らせていただきました。空色様は、私などよりはるかにお詳しいご様子ですので、時々、おじゃまして勉強させていただきますね。

投稿: NightWalker | 2006年9月22日 (金) 17時02分

補足します。
「ベンチャーや中小企業と大企業の連携、中小企業同士の連携、大企業同士の共同研究開発、産学連携、IT等の専門技能を持つ人材による共同事業などを振興し、新産業を創造する。」のがLLPの目的となってます。このため、
(1)日本版LLPは出資者全員が業務執行に参加する必要があり、お金を出すだけの人が出資者にいるのは×。
(2)(1)の条件をクリアするため、参加者の中にプロの金融業者を入れることで投資ファンドを成立させるなどの方法もあるが、既存のプロの金融業者が介在すれば、その分コストがかさみ安い投資ファンドを作りたいと言う目的は達成しづらくなるし、であれば、わざわざ新規にLLPなど立ち上げずともその金融業者が素直に安いファンドを売ればよい。
(3)純粋な投資事業では、結局、当局から(脱税していないか)見張られやすく、LLPの持つせっかくの内部自治の徹底と言う自由が実態面で失われる。これでは面白くない。

 などなどから、日本版LLPの禁止業務は士業や賭博関連のみとなってはいますが、純粋な投資事業に日本版LLPを活用することが現実的に難しいあるいはメリットがないのでは?

投稿: NightWalker | 2006年9月22日 (金) 20時39分

こんばんは。
その本を持っていないので、差し支えなければ教えてほしいという趣旨だったのですが・・ 気分を害されたようなら誤ります、すいません。

で、詳細な説明ありがとうございました。なんとなく頭の中の整理がつきました。納得はしていませんが(笑)

ちなみに私は特別投資に詳しいわけではありません。本格的に投資の勉強を始めたのは最近ですし。こちらこそ、いろいろ勉強させていただきたいと思います。よろしく!

投稿: 空色 | 2006年9月25日 (月) 00時53分

空色さま
 気分を害しただなんて、とんでもありません。
 私は投資歴こそ6年ほどですが、のんびり勉強しながら、のんびり投資中ですので、全然詳しくないのです。
 で、専門的な突込みをされちゃうと困っちゃうなーと言うところです。
 今後ともヨロシクお願い致します。
 
 

投稿: NightWalker | 2006年9月25日 (月) 06時23分

御報告がおそくなりましたが、私のブログ空もリンクさせていただきました。今後ともよろしく!

投稿: 空色 | 2006年9月26日 (火) 00時05分

空色様
 リンクありがとうございます。
 こちらこそヨロシクお願いします。

投稿: NightWalker | 2006年9月26日 (火) 00時17分

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